158. 脱選択社会

 お正月休み、実は少しばかりやらかしてしまいまして。台本はともかくとして、肝心の録音をすっかり飛ばしてしまったのです。

これには、もちろん私なりの理由がありました。普段、このポッドキャストは仕事帰りの車内で収録するのが日課なのですが、連休中となるとそうはいきません。ずっと家族と一緒に過ごせるのはありがたいことですが、休日は私の当番ということで食事の支度に追われ、どうしても時間的に押してしまいました。それでは夜に、と思っても、休みの日ですから当然のようにお酒をいただいてしまいます。そうなると、もう車へ向かうわけにもいかず、結局は自宅で録るタイミングを逃したまま、お酒の勢いもあってひたすら「取り入れ」三昧の日々を過ごすことになった次第です。

さて、何をそんなに「取り入れ」ていたのかと言えば、Netflixの『ストレンジャー・シングス』です。少々遅ればせながら、年末から観始めたのですが、これが実に見事な面白さでして。

詳細な内容に触れるのは控えますが、とにかく作中には80年代のエッセンスがてんこ盛りなのです。おじさんのツボをこれでもかというほど突いてくる演出には、もはや秘孔を突かれたかのような心地よさすら感じました。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『スター・ウォーズ』、『スタンド・バイ・ミー』といった、あの頃の映画や音楽にどっぷり浸かっていた世代には、間違いなく心に深く刺さることでしょう。ウィノナ・ライダーの出演も、当時を知る者としてはたまりません。

これこそが「ターゲットにされる幸せ」とでも言うのでしょうか。自分の好みが完全に解析され、「ほら、こういうのが好きでしょう?」と差し出される快感。共感の極みというか、脳内に多幸感をもたらす物質が溢れ出しているような感覚に陥ります。妻の勧めで観始めたのですが、自分の好みをここまで見透かされていることに、もはやお手上げといった気分でした。その渦に巻き込まれることが、なんとも気持ちが良いのです。

ただ、そこでふと考えたことがありました。調べてみると、現代人は一日に3万5千回もの選択を繰り返している、という説があるそうです。その真偽や計算根拠はさておき、実際それほどの決断を日々こなしていれば、脳がパンクしてしまうのも無理はありません。だからこそ、こうした「良質なコンテンツ」に身を委ねる時間は、脳を守るための防衛本能から生まれているのではないか、と思ったのです。

しかし、画面を眺めている間、果たして脳は本当に休めているのでしょうか。受け身で観ているつもりでも、脳内では無意識に物語を咀嚼し、感情を動かし、何らかの選択を繰り返しているのかもしれません。だとしたら、休んでいるようでいて、実は脳を酷使しているのではないか。そんな皮肉な問いを抱えつつも、心地よい疲れに浸るお正月休みとなりました。

今回の思考実験は「脱選択社会」

日々選択に追われるあなた。献立や視聴する動画やBGMなど『生活の手順』をすべてAIのサジェストに委ね、快適な生活を手に入れました。あなたはこのまま完全に身を委ねますか?それとも、どこかに『自分』を残しますか?

以上です。

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